2024年のノーベル平和賞が日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)に授与されたことは、核兵器廃絶を目指す取り組みで「ヒバクシャ」(広島と長崎の原爆生存者)が中心的な役割を果たしてきた歴史を認めるものです。ヒバクシャの不屈の精神と決意によって、核兵器禁止への取り組みは今後も必ずや続けられていくでしょう。
2017年の核兵器禁止条約は核根絶に向けた欠かせない枠組みを提供しています。今回の受賞は、米国などの核保有国や、日本やノルウェーなど核を保有しないが、保有国と同盟関係にある各国に条約への署名と批准を迫る圧力となります。
日本被団協の授賞はまた、27年前に地雷禁止国際キャンペーンと初代コーディネーターのジョディ・ウィリアムズ氏が平和賞を受賞して以降、多くの人びとによって築き上げられてきた人道的アプローチによる軍縮を積極的に評価するものでもあります。ノルウェー・ノーベル委員会が核兵器廃絶国際キャンペーンに平和賞を授賞してから10年も経っていないこともまた強調されるべきです。
核兵器禁止条約は特定の兵器の種類全体を包括的に禁止する5つの多国間条約の1つであり、人道上の懸念をその推進力としてきました。この条約は締約国に対して、過去の核兵器の使用や実験によって被害を受けた人びとの支援や環境の修復を義務付けています。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、容認できない被害をもたらす兵器、とりわけ常に無差別的な兵器への「人道的軍縮」アプローチに最優先で取り組んでいます。こうした枠組みは、国家安全保障上の利害を動機とする従来の軍備管理や核不拡散の取り組みとは対照的なものです。
人道的軍縮は何よりもまず人びとへの支援と人道的影響への対処を優先します。そのためには、各国政府、国連機関、赤十字国際委員会(ICRC)、グローバルな連合体を通じて緊密に連携する非政府組織(NGO)との間で密接な協力とパートナーシップが構築されなければなりません。
人道的軍縮の取り組みから得られた重要な教訓は、欠陥を抱えた合意ベースのフォーラムは総じて成果を上げられないことです。したがって、その目標は包括的なプロセスによって実現される規範の確立と履行を通じて、兵器を原因とする人間の苦痛と環境の破壊に対処することに置かれなければなりません。
人道的軍縮は、武力紛争がもたらす広範な、世代を超えた人道的被害への対処を可能にします。
核兵器のない世界を実現し、それ以外の懸念をもたらす兵器に対処するために活動する日本被団協の粘り強さとサバイバーベースのアプローチに、人道的軍縮を推進する人びとは大いに勇気づけられるに違いありません。